VOL.7IconINDIAN MUSICAL INSTRUMENTS
[2019.10.21/楽器紹介]
シタールとタブラだけじゃない!
魅惑の楽器オンパレード☆インドの伝統楽器

インドの伝統楽器の魅力は、悠久の時間の中で磨かれた音の美しさ。弦楽器の共鳴弦や打楽器のもつ倍音など、音そのものがうっとりするほど美しい。しかし楽器本体の構造は頑なにアコースティック。今回は仕組を知れば知るほど興味がそそられるインドの楽器たちを一堂にご紹介。お気に入りの楽器を見つけて、習ってみてはいかがでしょう☆

新井孝弘×ユザーンの演奏している楽器

インド楽器界のプリンス!/サントゥール【Santoor】
サントゥール【Santoor】
イラン発祥でピアノのご先祖的楽器。台形の木箱に弦を張った打弦楽器でバチで弦を直接叩いて演奏。1音に3本の弦が使われるため、チューニングに非常に時間がかかる。響き渡るコーラス効果で、この世のものとも思えない美しい音色が魅力。カシミール地方で使われていたものを、シヴクマール・シャルマとその父が改良し、現在のようにラーガを演奏できる楽器となった。
インド音楽の花形打楽器!/タブラ【Tabla】
タブラ【Tabla】
木製の銅をもつタブラと、金属の丸い銅のバヤ。一対で演奏される北インドの打楽器。打面の中央のスヤヒと呼ばれる黒い部分は鉄と米を練ったもの。細かいヒビで倍音が増殖され豊かな響きの音を出す。ほぼ1オクターブの音域を持ち、左と右のコンビネーションにより様々な音を奏でることができる。伴奏はもとよりソロ楽器としても演奏される、インド音楽の花形的打楽器だ。

インドの主奏楽器

インドの花形弦楽器!/シタール【Sitar】
シタール【Sitar】
インド楽器の中でも世界で一番有名。7本の演奏弦に多数の共鳴弦を持ち、ふくよかな余韻のある響きが特徴。フレットを移動し、演奏で使用する音階を作る。右手につけた鉄の爪で弦を弾き、左手で弦を抑えたり引っ張ったりして音程とアレンジをつけ演奏する。演奏中は鉄弦が左の指に常に食い込むため、過去にタモリ倶楽部で紹介された際「世界一痛い楽器」として登場したほど。
重低音の魅力!バスシタール!/スルバハール【Surbahar】
スルバハール【Surbahar】
シタールを一回り大きくした、低音シタール。バス・シタール。もっとゆったりと音楽表現をしたいと言う希望に応じて開発された。非常に重量感があり、深く体に響く低音域を発揮する。演奏には、なによりまず力が必要。
北インド楽器界のシタールと並ぶ双璧。/サロード【Sarod】
サロード【Sarod】
ペルシャ語で「美しい音」を意味する。金属の指板、木をくり抜いた胴にヤギの革を貼ったボティ。6本の演奏弦と2本のドローン弦、16本の共鳴弦を持ち、シタールの甘く芳醇な音とは対照的に、深く重く内省的な音色を持つ。20世紀、アラウッディン・カーンにより改良され現在の形に。右にココナッツでできたピックを持ち、左手は爪との間で弦を押さえフレットのない指板上を滑らせて演奏する。
巨大なふたつの瓢箪が特徴!/ルドラ ヴィーナ【Rudra Veena】
ルドラ ヴィーナ【Rudra Veena】
ヴィーナは古代インドの弦楽器の総称。北インドのルドラ ヴィーナはヒンドゥー教のシヴァ神のヴィーナで、通常ビーンと呼ばれる。2つの巨大な共鳴用瓢箪に竹筒の棹。フレットは棹に固定されていて、肩に担いで演奏する。もともとは声楽の伴奏にのみ使われていたが,現在は独奏楽器として発達。神秘的な感じがする美しい音色が特徴。
リバーブが響き続き渡る!/サーランギ【Sarangi】
サーランギ【Sarangi】
100以上の音色という意味を持つ楽器。1本の木をくり抜き作られる。3本のガットでできた演奏弦と36本の共鳴弦を持ち、左指の爪半月のあたりで弦を押さえ、弓で擦って演奏する。長いリバーブ効果のある音色はインドの楽器の中では最も人間の声に近いと言われる。調弦と演奏法が難しいため主に歌の伴奏用だったが、近年有能な音楽家の出現により主奏楽器としても人気となった。
詩人タゴールが愛した楽器!/エスラジ【Esraj】
エスラジ【Esraj】
主にベンガル地方伝統の音楽に使用され、詩人タゴールが愛した楽器として知られる。シタールに似たフレットを持ちサーランギのように弓で弦を擦って演奏する。演奏弦4本と15本ほどの共鳴弦を持ち、女性的な印象のチェロのような響きが特徴。1980年代、ほぼ演奏者が居ない状態から、近年音楽家たちの運動により演奏者が増えてきたそう。インドの弦楽器の中では比較的指が痛くない楽器。
クリシュナ神の吹く笛!/バンスリー【Bansuri】
バンスリー【Bansuri】
インドの竹製の横笛。ヒンドゥー教のクリシュナ神が吹いている、最も古い楽器の一つ。庶民的な楽器だったが、宮廷の古典音楽家によって改良され洗練された楽器へと進化。構造はとてもシンプル。6〜7つの穴を持ち、吹き口部分の太さが、全体に比べ狭いため倍音を含む大きな音が出る。低く柔らかい響きが心地良く、滑らかな音の動きも豊かに表現。息遣いを感じる雄大な音質が魅力。
とにかくめでたい!/シャハナーイ【Shahnai】
シャハナーイ【Shahnai】
木製で作られ、金属または木製のフレアベルが付いているダブルリードの縦笛。演奏は絶えず鼻から息を吸い込み、音を切らさず吹き続ける。縁起の良さと神聖さを感じさせる独特の音質。結婚などめでたい儀式に多く使われてきたが、ビスミッラー・カーンが古典音楽に持ち込んだ。演奏には、リードのスペアを沢山用意し首から下げておき、必要に応じて取り替える。
前に構えるインドスタイル!/バイオリン【Viorin】
バイオリン【Viorin】
1790年頃、東インド会社の軍楽隊により持ち込まれた。インドの古典音楽に合う新しい奏法が編み出され、現在もインド音楽に欠かせない人気の楽器となる。音色や音域が人間の声に近く、フレットレスなためラーガを演奏するのにぴったり。西洋とは異なり、胡座で座り、左肩と足の間にしっかりと挟み、前方に構える。音を揺らすガマックなどテクニックもインドスタイル。
インドで独自に進化したギター/インドスライドギター【Hindustani Slide Guitar】
インドスライドギター【Hindustani Slide Guitar】
ハワイアンギターを元に改良され、独創的な楽器に進化。メロディー弦、ドローン弦、共鳴弦と約20本ほどの弦を持つ。胡座で座り膝に水平に乗せ、フレットをスライドバーで押さえて演奏する。スライドギターとシタールをあわせたような音色がインド音楽とマッチし、人気の楽器となった。いまなお改良が続けられ新しいモデルが生まれている。
ドンブリでラーガを奏でる!/ジャルタラング【Jal tarang】
ジャルタラング【Jal tarang】
インド最古の楽器のひとつとも言われるドンブリ打楽器。水で満たされた陶器または金属のボウルのセットで構成。両手に持ったバチで端を叩くことで旋律を演奏する。音階はドンブリに入れる水の量でチューニング。「陶器そのものを叩く楽器」は世界的に見ても稀な存在。心が洗われるような軽やかな綺麗な音でラーガを奏でる。
演奏前に貼るのはチャパティ!/パカーワジ【Pakhawaj】
パカーワジ【Pakhawaj】
ブラフマーが創造し、ガネーシャが奏でたという紀元前から伝わる両面太鼓。主に北インドの声楽の伴奏に用いられる。演奏は太鼓を横に置き、盤面の小さい方の中央には、タブラと同様スヤヒと呼ばれるおもりがある。盤面の大きい低音面には、小麦粉を練ったチャパティのタネを貼る。演奏の度に貼り付け、その重さで音程を調節。ズドーンと響く重低音が特徴。

演奏を支えるインド特有の楽器

なり続けるドローンに注目!/タンプーラ【Tanpura】
タンプーラ【Tanpura】
インド古典音楽に無くてはならない存在。タンプーラのドローンからインド音楽は始まり、そして終わる。見た目はシタールに似ているが、フレットはなく4〜6本の開放弦で、演奏されるラーガの基本となる音を延々と鳴らし続け、演奏のバックグラウンドとなる雰囲気や環境を作り出す。
ふいごを動かすとドローンが鳴る!/ハルモニウム【Harmonium】
ハルモニウム【Harmonium】
西洋でパイプオルガンより手軽な楽器として開発された手漕ぎオルガン。イギリス統治時代に伝わり、インド音楽に適した形に改良された。片手でふいごを動かし空気を送り、内部の金属製のリードを振動させ音を出す。機動性に優れているため、パキスタン、ネパール、スリランカでも広く使用される。最近ではヨガのキールタンにも使用されている。

南インドの打楽器

耳に心地よいビリビリビリ音!/ムリダンガム【Mridangam】
ムリダンガム【Mridangam】
南インドの両面太鼓。現在は木をくり抜いた胴だが、元々は土で作られていた。皮は二重、三重重ねになっており、右手の面は高音、左手の面は低音を奏でる。右手側の叩いた時に弦楽器を思わせる「ビィン!」というシビレを伴った音色が特徴。大地をイメージさせる音色とマシンガンのような響きが魅力。北インドの両面太鼓パカーワジと似ているが、作りが微妙に異なる。
ベース音も出せるタンバリン!/カンジーラ【Khanjira】
カンジーラ【Khanjira】
南インド音楽で使用されるフレームドラム。タンバリンの一種。打面にはトカゲの皮が非常にきつく張られており、低音を出すために水で湿らせて張力を弱めてから演奏する。左手で盤面をベントすることで音程を変化させる。右手は指を巧みに使い、細かいリズム、豊かな音色を生み出す。
上半身ハダカで叩く壺打楽器!/ガタム【Ghatam】
ガタム【Ghatam】
南インドで使われる打楽器。鉄分を含む赤土で作られた素焼きの壺を、素手で叩くことによって音を出す。ペケペケ、コツコツと硬い音色が特徴。口がプレーヤーの腹に押し付けられた状態で、指と手のひらの付け根で壷の横を軽く叩き演奏する。壷の口あたりを叩き、ボム! と低い音を出す。体に近づけることで低音のピッチと共鳴を変化させる。腹も使うため演奏者は上半身が裸であることが多い。

魅惑のインドの伝統楽器は以下の文献やWEBサイトを参考に編集いたしました。